「ミャオのクリスマスプレゼント」

 それはローテンブルグという石畳の古い小さな街でのお話です。
黒いネコが木の固いテーブルの上に乗って、家人と昼の食卓を囲んでいます。
ネコの名前はミャオ。人間の年齢なら20歳くらいでしょうか。
ぺろぺろとお皿の上のミルクをなめています。
食卓を囲む女の子はなんだかそわそわしています。

「今夜サンタさん、来てくれるかしら?去年も来てくれなかったんだもの。」
ほお杖をつきながら女の子のメルがそうつぶやくと、母親はこう言いました。

「そんなほお杖をついているようなお行儀の悪い子には来ないだろうよ。それにサンタさんだって忙しいのさ。忘れる事もあるだろうさ。さあ、早く食べてしまいなさい。」


お母さんは急に不機嫌になり、女の子はがっかりして、ジャガイモのスープを飲み干しました。
そして僕にむかってこう意地悪く言いました。
「あなたにだってサンタさんは来やしないわよ!」
そういうと、外に出て行ってしまいました。

いつもは優しい女の子なのに、どうしちゃったのかな?
サンタさんが来ないからなのかな?
僕はまだテーブルの上でおお母さんとお父さんの話を聞いていました。

「かわいそうだけど、あの子に今年もプレゼント買ってあげられなかった。来年こそはきっと・・・」
「それともサンタがいないってこと、言ってしまった方がいいんじゃないかね。」
お父さんが言いました。
「いえ、1度くらい、サンタさんからプレゼントをもらったって喜んでいるあの子の顔をみたいじゃないの。来年こそは・・・」
「そうだね。」
寂しそうな低い声がしていました。

僕は家の外に飛び出しました。
なぜだか悲しい気持になり、石畳の上をたった、たったと足軽に広場までかけていきました。
広場ではお店やら着飾った人やらのおしゃべりで楽しそうです。

広場で絵を描いているおじいさんの画家がいました。
僕を見ると、「そこにじっとしておいてくれ。」
そういいました。
じっとしているのは寒かったけれど僕はじっとしていました。
おじいさんは僕をじっと見て何やらしています。
やがて、
「よし、かわいい絵が描けた。これならクリスマスプレゼントに売れるだろう。ありがとう。」
お礼なんか言われたことがなかったので僕はびっくりしました。
おじいさんは道に絵を並べました。絵に僕が描いてありました。
「お礼にこれをあげよう。さっき似顔絵を描いた女の子からもらったんだけど、こんなじいさんにゃあ、指輪は似合わないって。」
笑いながら、僕の首に赤いひらひらするものと指輪とかいう物を結んでくれました。

僕はまた、たった、たったと走って家に帰りました。
お母さんは首に赤いひらひらを巻いている僕を見ると、くすっと笑いました。

「どうしたんだい?まるでミャオがプレゼントみたいじゃないかい」
そうして、指輪とかいう物を見ると、「これは、メルにかい?」
目を細めながら見つめていました。
夕食の時、お母さんもお父さんもニコニコしています。
「今年はサンタさんが来そうな気がするよ。」
女の子のメルは目を輝かせました。
「私、いい子だったかしら?サンタさん、忙しくてウチに来るの忘れたりしない?」
「ああ。だから、今日は早めに寝るといいさ。」
メルは喜びいさんで早く干草のベッドに入りました。
「あなたにもサンタさんが来るといいわね」
と女の子は僕に優しく言いました。
屋根の上では星がたくさんまたたいています。
翌朝、赤いリボンと指輪がメルの枕もとの干草の一本に結んでありました。
見つけた女の子のうれしそうな歓声が朝一番に聞こえてきました。



メールマガジン「愛の砂時計」掲載 白鳥鈴奈作